オバケの駐在所
ハッとして
自分の体を見た時、
出し切った血が
更に引いていくのを
感じた。

うそ〜!?
わ、私はこんな格好で
ずっといたんかい……。

「今さっき風呂場でも
見たわけだし
そんな気にするなよ。

まっ頭隠して
尻隠さずだな。」

わざとらしく
しかめっ面にして
肩を叩いてきたおっさんを
鋭く睨みつけ
私は急いで洋服を着る。

うう、
悔しい……!
私のおバカ。

マフラーだけ
してるなんて……。

最後の最後に
嫌ぁな思い出を作り
もう戻る事のない
家の扉を開け、
車掌のいるバス停へと
三人で歩んだ。

裸を見られたといえ
おじさんの言う通り
そんな事を
気にする余裕もなく、
この時間を
心に留めておく事。
その事だけに
思いを費やした。

いまわの際にいる
私自体、
とても曖昧なものだから。

……一言くらい
欲しかったけど。
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