オバケの駐在所
ぐるぐる世界が回って、
だんだん体が重たくなって、
徐々に息が苦しくなって、
そうしたら目の前の闇が
わずかに裂けたんだ。

そこから必死こいて這い出たら
私は土の上に顔を出した。

「おお、お嬢さん
無事だったか」

「ぶぇーっぺっぺっ!」

なんか目の前に
新三郎さんがいたけど、
それよりも何よりも、土!

……まさか地面から
出ることになるとは。

どうやらここは
お寺の前のお墓らしい。
そういえばお露が
裏は斎場になってるとか
言っていたけど。

お墓は墓石以外、
全て燃え尽きていた。

そして墓石が
ミミズみたいな草書で
『一場牡丹朝露の如く』と、
赤い血の色で刻みだした。

後でハジメさんに
意味を聞いたら、
牡丹のような
美しい時間を過ごしたけど
朝日が射した露みたいに
儚く消えてしまったって
事らしい。

私の体には
お露に抱きつかれた時の
白粉の匂いが
まだ残っていて、
振り向いたらそこに
お露がいそうな気がした。

「ぐっはあ!土、土!
土ぐっはあ!」

修二くんも出てきた。
後で意味を聞いたら、
どうやら土を食ったって
事らしい。
わかるぞ、友よ……。
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