オバケの駐在所
私はつられてステンレスの
マグカップに入れてる
白濁色の甘酒をちびっと
飲んだ。

「……で、昨日だけで
こんな折ったの?」

「ううん。実はね、
あの後タマちゃんと晃くんが
家に来てさ。
持ってきてくれたの。
最近2人して何やってるかと
思ったら。
きっと私の風邪が
治りかけてたから
急いで作ってくれたんだよ。
もう夜も遅かったのに……」

「千羽鶴ねぇ。
で、これをお露にあげるの?
露骨じゃない?」

「ちがうよ。
これはお手本。
あげるわけないでしょ?
せめて百羽は作るからね。
ほら、手ぇ動かして」

「はぁ、報告書
作らなきゃならんのになぁ」

……しかし
誰に提出するのかも
わからない紙を
なんで書くのかな。

この人は
きっと公務員ではない。

制服や備品、
知識はあるみたいだけど……
ちゃんと
仕事もしてるっぽいし
ご近所付き合いも
あるみたいだけど……。
普通の交番じゃ
ないような気がするし、
結局どこがって言われても
何がって言われても
わからないんだけど……。

「やあ、お二方。
楽しそうですな」

すると江戸訛りの男の人が
とつぜん壁の向こうから
現れた。

ニコニコしてて
随分昨日と雰囲気が
違うみたい。

……なんてそりゃそうか。

「この度は
お世話をかけまして……」

新三郎さんの前にいた
車イスに乗った人が、
座りながら
深々とお辞儀をした。

色留袖におしとやかな所作で
黒い大きな瞳が
印象的なおばあちゃん。
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