オバケの駐在所
私も彼女に会釈を返す。

心なしか前に見たときよりも
肌付きがいいが、
年をとっていても
品格のいい顔立ちが
そう見させているのかも
しれない。

「お露のことは新三郎から。
火の中に身を投げるなんて
あの人は本当に
馬鹿なことを……」

「私がお露さんの最後を
見届けた時、
とてもおヨネさんのことを
気にかけていたように
思いました。
……その、おヨネさんは
お露さんを
恨んでいないんですか?」

私は少し控えめなトーンで
聞いてみた。
悪いことを聞いてるわけじゃ
ないけど、
どことなくバツが悪いからだ。

おヨネさんは持っていた箱を
遠い目をして眺めていた。

「恨んでいたといえば
そうでしたし、
恨んでいないといえば
恨んでいませんでした。
強欲な所もありましたけど
心遣いの深い人でしたから。
そんなあの人が
私を思っての行動ですので、
身をつまされるような……。
ただ心が……
締めつけられます。
もう1度話すことが
できたらなと思うのですが」

するとおヨネさんは
机の上の折り紙に
気をとられた。

「おや、
鶴を折ってるのですか?」

「ええ。お露さんの
供養にいいかなって」

「……そうですか。
きっと母様も喜んでくれる。
ありがとうございます
なつみさん」

そう言って両手から溢れる
千羽の鶴を持ち上げた。
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