オバケの駐在所

それはまるで物語のページに
まぎれこんで
しまったようだった。

この話は嘘なんだよって
ご丁寧に脚注で
教えてくれそうで
いまだに半信半疑で
いるくらい。

でもこれが本当に紙切れで
私の人生行路や心情が
文字の羅列に
なっているんだとしたら
間違いなくその本は
落丁していることだろう。

なんで私は死んでるの?

思いあたるふしはない。

今朝起きたら
私はオバケになっていた。

誰もが知っているようで
何も知らない
不気味な幽霊に。

今まで何十、何百と
さまよえる魂を見てきて
オバケの知識は
他の誰よりもバッチリ
わかっていると思ってたけど、
実際そんなもの
何の役にもたたなかった。

いざ、それになってみれば
孤独でみじめな気持ちが
じわじわと
押し寄せてくるだけ。

ジャージ姿になった
クラスメート達の
体育のまっただなかを、
校舎と校庭の境にある
深緑のフェンス越しに
眺めながら
私はぼーっと考えていた。

空を見上げると
梅のつぼみがほころび、
細い枝の間に広がる
2月の冬晴れ。

すがすがしいくらいに
冷えていて
平たく不規則になった
いびつな雲が凍ったように
空にはりついているけど、
そんな全てが作り事みたいだ。
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