オバケの駐在所
まるで雷が近くに落ちたような
天災レベルの
とんでもないエネルギーを
目の当たりにした
感覚だった。

「時間だな。
せいぜい励むといい。
無益なことだが
徒労に帰するのも
人の世の儚さというやつだ」

声は幼さの残る
甘やかなトーンだけど、
ぼそぼそっとした口調や
一語一句に重みがある
しゃべり方からは
なんだか貫禄を感じる。

私はその時ねとっとした
この嫌な感覚がなんなのか
ようやく思い出した。

魂を運ぶSLの
機関車で会った……
そう、死神と対峙した時だ。

少女は笑った。

するとその笑顔のように
歪んだ空間が
私と少女を包みこむ。
それとも空色の何かに
掴まれたと言ったほうが
いいのか……。

そしてまた頭の中まで
揺れるくらい
すさまじい轟音が響いて
どうやら私は気を
失ってしまったようだった。



もちろん死んだ人間が
本当に気絶するかどうかは
ニュアンス的に
違うのかもしれないけど
しばらく意識が
なかったのは確かで、
やがて目を覚ました私は
どこかほの暗い部屋にいた。

天井と思われる
2mほどの頭上から
所々光が注がれていて、
先のほうまで見える
奥行きから察するに
けっこうな広さらしい。

放り投げられたように
山積みの荷物と
一緒に横たわっていた私は、
頭が重たくて、
妙に体がだるくて、
赤ずきんの狼みたいに
石を詰められて
湖に沈められた気分だった。

……私は本当に死んでるんだ。

もうこれから先どうなるか
まったくわかんないんだな。

しみじみと感じた。

近くを手で探ってみるが
唐傘はいない……。
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