オバケの駐在所
すると天井からバタバタと
足音がする。

そしてパラパラと
砂ぼこりが降ってくる。

もしかするとどこかの地下室に
拉致られた?
うーん、まさかこんなところが
輪廻に通ずる
天国なわけじゃあるまい。

起きたての最悪な意識のなか、
辺りを見渡してみる。

わずかに漏れる筋状の光は
舞ってるホコリばかりを
映しだしていたけど、
天井から階下に伸びる
ハシゴくらいの幅狭な階段を
ほのかに照らしてくれていた。

私は自分のことを
けっこう流されやすい人だとは
まあ自覚してるけど、
今回ばかりはそれももう
仕方ないのかもしれない。

流れの行き着く先に
蜘蛛の糸があったとしても
棺桶があったとしても。

死のカウントダウンは
刻々と針を進めている。

私は履いていた下駄を
手に持つと、
盛られた山から
転ばないように慎重に降りて
暗闇の中を手探りで
階段まで辿り、
手をかけては足を乗せた。

上で誰かが歩く音。
階段のきしみ。手触り。

これらはみんな
木材でできているらしい。
実に親しみの
もてることだね。

私は恐る恐る
天井の扉を開けた。

外は船の甲板のようだった。

暗かった部屋にいたせいか
斜めに走る光が眩しくて
冷たい風が気持ちいい。

……けど甲板?
< 418 / 566 >

この作品をシェア

pagetop