オバケの駐在所
私はお勝手に通されると、
最初はとにかくひたすら
野菜を洗わされた。
何百人と働いている
キャンプ場のような
大部屋の一番隅でポツンと。
東西の戸は開きっぱなしに
していたけど、
部屋の真ん中で
それは大きな釜を使って
米を炊いていたり、
レストランで
バイトしてた時じゃ
考えられないくらいに
みんな荒々しく調理していたり
罵声を飛ばしたりしているから
暑くてしょうがなかった。
ただバイトと違う
旨みといったら
お金こそ稼げないにしろ、
半魚人がバカでかい包丁で
魚をさばくさまや、
高い天井の上のほうにまで
ズラッと置かれている
たくさんの調味料を
長いハシゴを使って
選んだりする
今まで見たこともないような
仕事を経験できていること。
釣られて
私まではりきっちゃうよ。
メインディッシュに
さしかかったら見ものだなと
私は更に深くYシャツを
まくりあげる。
そんな気分も乗ってきた
時刻19時を
少し回ったところ。
せわしなく張り上げた声が
舟内のすみずみまで
響きわたった。
「神様がご来場〜!
神様がご来場〜!」
私ら調理班の面々は
その言葉を聞いて、
どよめきと同時に
いっそう慌ただしく動き回る。
「造りができてないぞー!
通しを準備しろー!」