オバケの駐在所
私は下駄を履き
庭園のほとりにあった
小さなベンチに腰をかけると、
ブレザーの懐に入れていた
折れた梅の枝を手にとり
指の腹で回しながら
大きく深呼吸をした。
この時期は
他の季節と違って
外の匂いも乏しいけど、
この体になると
それらさえも恋しい。
部屋の扉を開けた時の
殺伐とした匂いでも、
体育でグラウンドを走って
喉の奥まで
むせかえるくらいの
冷たい呼吸にまじった
土気じみた匂いでも。
もちろんほのかに香るはずの
梅の萌芽も。
私の感覚から
もうまるっきり匂いが
なくなっていた。
死とはどうやら
生きてゆくための純粋統覚を
奪われるものらしい。
それを防ぐ術は恨み?
後悔?未練?
……今まで見てきたオバケ達は
どんなだったかな。
のほほんと
暮らしてたからなぁ私。
「おやおやぁ?
お主こんな所で
何をしておるのじゃあ?」
と、いきなり静寂を破った
女の人の声。
なんか聞いたことが
あるような気がするのは
気のせいであって
ほしかった。
「な〜んで人間のお主が
宝舟に乗ってるんじゃ。
ここは神域じゃぞ?ん〜?」
庭園のほとりにあった
小さなベンチに腰をかけると、
ブレザーの懐に入れていた
折れた梅の枝を手にとり
指の腹で回しながら
大きく深呼吸をした。
この時期は
他の季節と違って
外の匂いも乏しいけど、
この体になると
それらさえも恋しい。
部屋の扉を開けた時の
殺伐とした匂いでも、
体育でグラウンドを走って
喉の奥まで
むせかえるくらいの
冷たい呼吸にまじった
土気じみた匂いでも。
もちろんほのかに香るはずの
梅の萌芽も。
私の感覚から
もうまるっきり匂いが
なくなっていた。
死とはどうやら
生きてゆくための純粋統覚を
奪われるものらしい。
それを防ぐ術は恨み?
後悔?未練?
……今まで見てきたオバケ達は
どんなだったかな。
のほほんと
暮らしてたからなぁ私。
「おやおやぁ?
お主こんな所で
何をしておるのじゃあ?」
と、いきなり静寂を破った
女の人の声。
なんか聞いたことが
あるような気がするのは
気のせいであって
ほしかった。
「な〜んで人間のお主が
宝舟に乗ってるんじゃ。
ここは神域じゃぞ?ん〜?」