オバケの駐在所
私らが姿をあらわしたのは
まさにその宴の真っ只中。

大広間のど真ん中で
桜の花びらを派手に
撒き散らして立っていた。

部屋にひしめく神は
大小さまざまだが
どれもこれも越後屋に
饅頭をもらってるような
悪そうな顔に見える。

廊下までは遠い。

畳が千畳敷き……くらい?

奈良の大仏が立てそうな位置に
アーティスティックに
巨大な欄間が
彫られているせいで
今いち距離感がつかめないが。

サクヤ姫の後ろに
隠れようとしたけど、
肩をゆるみなく
抱かれているので
逃れることができなかった。

「おう、姫!
そやつは誰じゃ!?」

目の前にいた
兜と鎧を纏った者が尋ねる。

「わらわの娘じゃ。
日暮町にうい奴がおると
前に話したじゃろ?」

そう言って私にウインクした。

「さあ!酒を持ってまいれ!
それと桃花源の果実じゃ!
夜は更けたばかり!
おおいに盛りあがろうぞ!」

そう言うと畳のイグサが
メキメキ音をたて、
天井に向かい
急にのびたと思ったら
1本のそれは立派な
しだれ桜となった。

そして見とれる間もなく
天頂部からポッと火がつき、
すぐに花全体に燃え広がる。

とたんに赤い翼を広げた
仰々しい大きな鳥が
けたたましく産声をあげながら
火の中から出てきて、
更にいきりたった神々が
何故かその巨鳥めがけて
無数の矢やモリを射って
それを天井の格子に
はりつけた!

ガラスを引っ掻いたような
悲鳴をだす巨鳥。

……ってもうめちゃくちゃ!

盛りあがる神々!

帰りたいぃぃ……!
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