オバケの駐在所
なんだか聞くに堪えなかった。

イジメを遠巻きに
見ているようだ。

「こういうのは嫌いかね?」

「……す、少し……だけ」

「ふむ、まあ優しさだけが
良いこととは限らんがな。
サクヤ姫の甘ったれを
見習ったらいけないよ?」

……ここは返事を
したほうがいいのか。
しないほうがいいのか。
下手に頷いたら
悪い展開にもって
いかれるかもしれないし、
信念的にもどうなんだ?

サクヤ姫は酔って向こうで
なんか叫んでいるだけだし。

事はどうにか
穏便に進めたいけど。

「まあ神でも生まれたては
そういった者も多いがね。
……だけど鳳凰を
知らなかったのは
君が初めてだ」

う、……バレてる?

心臓の鼓動が強くなった。

なんとか曖昧に首を動かすのが
私の精一杯の
リアクションだった。

「君は桜から
生まれたらしいね。
なるほど、確かに八重と染井の
匂いが混じる。
だが微かに
人間の匂いがするのは
わしの気のせいだろうか?
どう思う?なつみ姫よ」

名前も知られている……。
これは試されてるのか?
だとしたら正直に言ったほうが
いいのかもしれない。
だけど、だけど
カマをかけられてるんだと
したら……。

目が驚くほど早く
乾いてゆくのを感じた私。

嘘はどちらかと言えば
苦手なほう。

「わ、私は……」

その時だった。

知らぬ間にたくさんの女中が
何人も部屋に入ってきていて、
私達の隣に2人がかりで
何かを運んできた。

それを見て続きの
言葉を忘れてしまうほど
私は目を疑った。

それは死体であった。
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