オバケの駐在所
「ふぅむ。燕の青二才か」

おじいさんは
少し考えるしぐさをして、
再び目尻をたらす。

「お前も一緒に
ここに座りなさい。
なんならこのわしが
食べさせてやろう。
他人のストマックを
自分の胃酸で溶かせ。
共食いなんてよくあることだ」

「遠慮しておくよ。
どんなにストレスを溜めても
俺は胃に穴が
あいたためしも無いしね。
行こう、なつみ姫。
あんたとは酒を
酌み交わしたかったんだ」

と、私の腰あたりを押して、
とぼけるように
その場を後にしようとする。

「待てい」

が、急に威圧的な口調で
呼び止めてきた神。
ハジメさんは背を向けたまま
顔だけを振り向かせた。
私も怖かったので
せめてかっぽじいた
耳だけを傾けた。

「貴様、何故今日は
顔を見せた。
今まで一度も集まりなんぞに
来やせんかったろう。
何を企んでいる」

そう言いながらあぐらをかき、
5、6合ほどの大きめの枡を
横に構える。
たまたま居合わせた女中が
すぐさま膝をついて
にごった酒を注いだ。

「あなたには
関係のないことですよ、
ダイコク様」

驚いたことに神に対して
まったくひれ伏す態度を
見せないで、
そのままハジメさんは
私を押しながらそそくさと
この大広間から出た。
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