オバケの駐在所
さて、私は
ちり紙いっぱい使って
鼻をかんだ後、
ハジメさんの後ろについて
また舟の中をくまなく歩いた。
階段を上がったり下ったり
迷路のような道筋をたどる。
ただかろうじて階下に
向かっている意向だけは
わかった。
それにしても
ここはテロ対策でも
講じてるのだろうか?
へとへとになるわ。
サクヤ姫が迷い神になる
気持ちもわかる。
やがて行き着いた扉を開けると
冷たい風が吹き荒れる
屋外に出た。
明るい所から
急に暗い所へ出たため
すぐにはわからなかったが、
目が闇に慣れてくると
そこには先ほどの甲板が
眼前に広がっていた。
そして……寒い。
コタツで一生
寝て暮らしていたい。
これじゃ干したふんどしは
凍ってるんじゃないか?
……まあ……いいか。別に。
ハジメさんは帽子を抑えながら
舳先に向かって歩いていった。
その先に誰かいる。
船首に座る人影が見えた。
私も遅ればせながら
歩み寄った。
「どうも、エビス様」
その人は猫背で
頭巾に似た帽子を被っていて
釣り竿の先にくくった
糸のようなものを
舟の下へ垂らしていた。
船頭の魚さんじゃない。