オバケの駐在所
ハジメさんは私の頭を
ポコポコ叩いて
またイスに座った。

宝舟に乗ったのは
宝くじに当たるくらいの
確率だったけど、
そこでの出来事は
まさに一攫千金以上の
ものだった。

デパ地下の試食コーナー並みに
ありふれた存在の神。
残忍で我が強くて
食物連鎖である
ヒエラルキーの最上階層で、
その君主は
命のなんたるかを
よく教えてくれた。

そしてもう1つ、
粗暴な性格の
あの魚さん達もそうだ。

私は空を泳ぐ
その光の大群に
たくさんの思いを込めて
頭を下げた。

それに応対して
くれてるかのように
光は辺りを回遊しだして、
湖に投げたルアーよりも
よく反射する
小さな小さな銀色のウロコを
いくつも落としていく。

私はそれを手で受け止めて
ようやっとここに
生きていられることを
嬉しく思えた。

これとない出会いが
梅の香りよりも心に残る、
深い慈愛を
もたらしてくれる。

闇夜にうごめく
まばゆいほどの魚影は
やがてどこかに
消えてしまったが、
私は満面の笑みを
顔いっぱいに咲かせて
彼らを見送った。




それからこれは余談に
なるんだけど、
ハジメさんの交番から
お家に帰ろうとしたら
昨日会った
あのユエって女の子が
目の前に佇んでいたの。
……それがさ。
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