オバケの駐在所
ハハハ、
心の中を覗いてんの?

おばあちゃんは
吉祥文様の
どこにもありそうな
こなれた茶色っぽい着物を
纏っていて
だがよくよく見ると
上品な趣もある。
そして桜の前に立つ
その姿はやけに
雰囲気に合うんだが……。

私はほんの少し
寒気がしていた。

……合いすぎ。

「いや〜、
団子とかあるなら……
ある?」

しかしおばあちゃんは
動かずじっとしたまま。
笑顔を崩さず
視線で促している。

どうしようか、
どうもインチキ臭いけど、

この空気に耐えられん……。

「……なくてもいいか。」

私は何故か愛想笑いを
しながら
迫力に押され
木の下へ
歩みよろうとすると、
通りの向こうから
乗用車が道を曲がって
きたのだろう、
ヘッドライトが順番に
並木を照らしていく。

そして私等の横を
通り過ぎようとした時
ハロゲンに瞬時照らされた
その光景に
私はポッケに手を
突っ込んだまま
固まってしまった。
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