オバケの駐在所
「このメス豚が」

私は耳を疑った。

そこにいたのは
瞳がイッちゃってる
あのゾンビみたいな
銀髪の女の子。

その子がすれ違いざま
私にそう言ったのだ。

……な、なんだとぉ?

「おう、帰ったかユエ」

ハジメさんが言う。

知り合いなのか
その子は何も言わず
デスクの上の報告書を
足の爪先を伸ばして
覗いていた。

失礼なことを言う子であった。

ユエ。
そーいえば神様だとか。

だけどハジメさんの
知り合いとわかれば
私だって怖くはないぞ?
神には免疫ができたしね。

「こら、目上の人に向かって
その口の聞き方は
ないでしょ?
お姉さんって言いなさい」

……なんて。
私のほうが年下に
決まってるだろうけど
天然のフリだ。

しかしその子はフンッと
鼻を鳴らして、
そして疎ましいと
言った具合に
私のほうをちらちら
睨んできた。
さらにはボソッと
何か口ごもっている。

「……死ね……死ね
……死ねよ……死ね……」

……うっ。
呪いの言葉だろうか?

だいたい私の何が
気に入らないのか
知らないけど、
そんな目で私を睨んだって、
私はもっと迫力あるのと
出会ってきたんだからな。

黒くてデカい大黒様や、
イワシの魚さんとか、
白くて目が
お月様みたいに綺麗な
龍神と……か……。

だが思い出していて
ふと、気になった
ことがあった。
龍神に助けられた時に
聞こえてきた声と
今のこの子の声……。
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