オバケの駐在所
何を勘違いしたか
とつぜん桶を
ひっくり返すような事を
吐露して、
……もう何度目だろう、
私の頭をもぐらでも
手なづけるかのように
叩いた。

それから交番の外に出て
背中を向けたまま
空を仰ぐ。

「……昔な、
100年くらい前に、
あるところの少年が
ある女の子に聞いたんだよ。
『生きるのと死ぬのって
どっちの力が強いのか』って」

私は一抹の不安が
頭をよぎった。
今の言葉は
本気で言ったのだろうか?

「女の子はな、
生きる力のほうが
強いって言うんだよ。
何故って聞くと
そうじゃなきゃ
命ある者みんな
この世に生まれてきた意味が
ないって言うんだ。
だけどそれを
肯定しない奴もいる。
生きとし生けるものが
頭を抱える超難問さ。
本当のとこは
どうなのかわからないし
人間の一生涯くらいじゃ
解けやしないだろうな」

……黒いワンピースの
裾からのぞく細い手足。
無垢な体。
長い銀髪と月の瞳の
神懸かった面影を
残してる以外は
マジで子供にしか見えない。

肌は確かに
透き通るように白に近いが、
どう見ても
人間の普通の女の子だ。

それにもし龍神だとしても
あの力強い
雄々しい姿にも
重ねられない。

女子力?もちろんないない。

……えっと、わいふ?
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