オバケの駐在所
煙草の煙なんて
吸わない人からしてみたら
ただの有害物質にしか
ならないもので、
どこの会社の喫煙所も
たいていは窓際か
部屋の隅っこにあるのが
定石だろう。
それはうちの会社も
例外じゃない。
建物は7階建てで
全てのフロアに
いちおう喫煙所があるが、
換気扇が回って
隔離されてるような
所だけではなく、
ただ廊下の行き止まりに
灰皿を置いただけの
粗末な所もある。
ただ、それが少し
奥ばった場所になっていて
通路に設置してある
自動販売機で
死角となってるために、
こちらの存在が気づかれずに
人の会話が
しばしば耳に
入ってしまうことがあった。
もちろん本意じゃない。
「まぁ、いわば
神社でお賽銭なげるくらいの
感覚かもね」
「にしても神様、
腰ひくすぎでしょ〜。
だったら私の給料を
上げてほしいよ。
……それより聞いた?
FAのあの課長、
後輩が馴染みの顧客
切っちゃって
一緒に共々責任を
とるかとらないかって話」
「ああ、聞いた。
課長も頑固だからねぇ。
だいたい野村さんじゃ
荷が重いんだよ。
後釜として引き継いでから
何もいい仕事してないし。
課長も落ち目よね。
あんな子を選ぶなんて。
……やっぱ……スケベ欲?」
「ああ〜もう最悪。
排水溝の神よ、
どうか彼に天罰を……。
なーんてね」