オバケの駐在所
光に映し出された
木の根元。
おばあちゃんが
座っていたその場所に
確かに見えた赤黒い血。
腹辺りから
破れ出ていた臓器。
生気の感じられない瞳。

ハ、ハァ!?

そこにはおおよそ猫に
間違いないと思うが
獣の死骸が転がっていた。

何しちゃってんの!?
この人!

先ほどの闇の中の
シルエットと
その動作から
この人が何をしたかは
誰に言われるまでもなく
明白な事だった。

「どーしたんかえ。
ほれ、
もっとそばおいで。
そんな所にいちゃ
声も届かないよ。

……それとも、
何か見えたのかい?」

微笑みながら
ぐっと声に凄みを
入れてきた時
寒気が全身を巡り回る。

あ、
しまった、この人……。

そして私は
おばあちゃんの
問いかけに答える事なく
背を向けて駆け足で
その場から走りだした。

人かと思った。
……あれはただの
キチガイなんかじゃない。
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