オバケの駐在所
前任者がより分けてきた
しがらみもまとめて
営業を引き継ぐって
いうからには
渋滞にハマるのよりも酷で、
どうすれば前に進めるのか
ひとえに
わかったもんじゃない。

だいたいあれは
頭が固い顧客でもあったし、
下げ相場の今のご時世で
二年続いただけでも
大したものだと思っていた。

しかしどうもまわりは
納得してくれないようだ。

「肩をもってくれるなー。
本当なの?
もしあいつが何か
やらかしてたとしても、
責任は君に行くんだからな?
営業ってのは
普段の性格が
表に出るもんだし
特に証券取引の
こんな大役だとさー、
舞い上がって
自分じゃ気づかないうちに
人に迷惑かけてることだって
あるわけじゃない。
新規開拓も
できてないみたいだしな。
頼むよ?ほんと。
今度君を総務のいいポストに
推そうと思ってるんだから。
それにあんまり
頭固くしてるとハゲるよ」

自分の腰あたりまで映る
長方形の大きな窓の縁に、
蓋を開けないまま
缶コーヒーを置いて
俺は電話を切った。

この会社で
ごく自然な流れで
キャリアを重ねていく。

肩書きをよくするべく
優秀な社員として
ひたすら歯をくいしばる
中間管理職。

なんのために
働いているのかは、
すでに見失っている。
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