オバケの駐在所
……でも、おかしいな。
大勢の人がいるような
気配がしたのに。

いるのは1人だけだ。

するとその警官は
ゆっくりと交番を出て
心もとなく
こちらへ歩いてきた。
そして――

「ねえ、君たちは
どこから来たのかな?」

「――へ?」

「他の街に
住んでるんでしょう?
見かけない顔だったから」

唐突な会話だった。

「……あ、ああ。
家はもっと都心寄りで、
ちょっと用事があって
この街に」

「仕事帰りですか?」

「はあ……」

「会社はどちらで」

これは職務質問だろうか。
そんなに怪しく
見えたのかな……?
小百合も一緒だし
ちょっと面倒くさいな。

「すいませんが
ちょっと急いでるんで」

と、小百合の手を引いて
横断歩道を
渡ろうとしたが――

「まだ赤ですよ」

信号はまだまだ青に
変わっていなかった。

……う、何をしてるんだ俺は。
これじゃまるきり
怪しい人じゃないか。

警官の嫌な視線を感じた。
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