オバケの駐在所
東京郊外にある米軍基地は、
のどかな田園臭さの残る
街の中心に敷かれている。
夜になれば空一面が
オレンジ色に焼けるくらいの
大きなライトが
並んでいるために、
空から見ると
アスファルトコンクリートの
長い滑走路が嫌でも目立つ。
それを目印に
山麓が繋がる土地のほうへ
進路を変えた。
「あそこだ!
あの山肌が露出している所!
あそこに小百合は
いるかもしれない」
そこは霊園ともとれる
小さな墓場であった。
もみの木が一本
レンガに囲まれて立っていて
それを指標に
様々な墓石が並んでいる。
ただどの石も軒並み
雪を被っていて
故人を判別するのは
難しそうであった。
……頼む。
ここであってくれ。
俺は着地が待ちきれなくて
2階くらいの高さから飛んだ。
そのすぐ後に
周りの木の枝へ
何かが乗ったかのように
たくさんの雪がしずり、
なんでか知らんが
大きな風が背中を押した。
警官の他に
なんかとんでもないものが
後ろにいるような気が……。
いや、ともかく俺は
すぐさま墓を見やった。
ここに来たのだって
全くの当てずっぽうだ。
あるわけない。
けれど、ないこともないはず。
そのあぐねる想いに
応えてくれたかのように、
霊園の隅っこのほうに
ただ1つだけ
綺麗に雪を掻き退けてある
墓石を見つけた。
急いで近寄って見てみると
洋型の小さな石碑に『暁』と
墓銘が草書で書かれていた。
暁で雪って、まんまだ。
と、思わず嬉しくなって
笑ってしまった。