オバケの駐在所
裏に『暁美雪』とあったので
間違いない。

やっぱり来たんだ小百合。

毎日、ここに
通っていたんだろう。

常緑樹の深い色と
若葉の青い緑が
霊園を囲っている。

目の前にはみゆきが愛した
日暮町の風景が広がっている。

米軍基地の明かりが
印象的だから
絶対に外せないって
ぼやかれて、
夜景探しのドライブに
よくよく駆り出されたもんだ。

お前の希望通りの場所に
建っているじゃんか。

一瞬であったが、
当時の思い出が心をよぎった。

ここに来ても
何も変わらないって
思っていたのに、
自分でも思いがけない気持ちが
胸に広がっていく。

ずっと拒否してた
場所だったのに……。

……ごめん。
今度ちゃんと
お墓参りに来るから。

あいつを探しに
いかなくちゃ……。

「おい、こっちだ!
足跡が続いてる!」

小百合のものとおぼしき足跡は
今さっきつけられた
ばかりのようで、
雪を乗せてクリスマスツリー
みたいになった
もみの木を一周して
出口に向かっていた。

舗装されてる道を
小さな歩幅で進んでいる。

その先に赤黒い塊が
雪の上にぽつんと
置いてあるのが見えた。

それは手のように見えた。
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