オバケの駐在所
「つい声をかけちゃったけど
私本当はもう
あなたのこと嫌いだから。
今さらお墓参りに来たって
なんの気持ちも感じないから」

そんな冷たく
憎まれ口をたたく小百合を
俺は思わず抱きしめた。

強く感情のままにだ。

「よかった……。
本当によかった……。
俺はお前のことが
大好きだから……」

「ちょっ……。何?」

生きていてくれてよかった。
それだけでいい。

それだけでいいんだ。

「もう一生
伝えられないかと思った。
俺には小百合が必要なんだ」

そんなことを言葉に出したら
なんだか鼻水が
どんどんでてきた。
子供みたいな声も出している。
でも止められないんだ。
泣いちまったもんは
仕方ないだろう。

「な、何なのよ……。もうっ」

毒気を抜かれたのか、
訳がわからぬといった具合に
小百合も背中に手を回してくれ
慰めてくれた。

しばらくそうしていてら
小百合と警官が
声をそろえて笑いだした。




墓で手を合わせたあと、
今までのことを
小百合に話した。

オバケのことや
ずっと抱えていた悩みも
包み隠さず
全部素直に打ち明けた。

そしてマスターのことも。
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