オバケの駐在所
その時、
俺はその瞬間、
まさしく呼吸を忘れていた。
通りすぎようと
垣間見えた横顔。
声質も何か
引っ張られるものがあったが、
その去っていく
女の人の後ろ姿。
死んだみゆきに
そっくりだったからだ。
……まさか、本当に?
願いが叶った。
衝撃としては
今までのどんな出来事も
忘れてしまうくらいだ。
俺は急ぎ足で歩くその人に
すぐさま駆け寄ると、
礼儀などかなぐり捨てて
その人の肩を構わず
力のままに引き寄せた。
だが驚き振り向いたその人は
背格好こそ似ているものの、
ほんの少し
幼い顔立ちであった。
黒いシックな
パーティードレスを着ていて
頭に大きなコサージュを
飾っているところが、
大人びた印象にさせるのか、
付き合っていた
彼女そのものに思える。
しかしみゆきではない。
「……あの?」
「はっ。
いや、すまない。
人違いだった。
気にしないでくれ」
と言いつつも俺は
目を離せないでいた。
その子は高校生くらいだろうが
みゆきの面影が
随所に見られるんだ。
こんなにも風体が似る
他人がいるものだろうか……。
この子は見ず知らずの
赤の他人なのに
――抱きしめたい。
そんな男の欲望までもを
沸々とこみ上げさせる
気さえした。
とっさに下唇を強く噛んだ。
「君はみゆき……
じゃないよな?」
俺はその瞬間、
まさしく呼吸を忘れていた。
通りすぎようと
垣間見えた横顔。
声質も何か
引っ張られるものがあったが、
その去っていく
女の人の後ろ姿。
死んだみゆきに
そっくりだったからだ。
……まさか、本当に?
願いが叶った。
衝撃としては
今までのどんな出来事も
忘れてしまうくらいだ。
俺は急ぎ足で歩くその人に
すぐさま駆け寄ると、
礼儀などかなぐり捨てて
その人の肩を構わず
力のままに引き寄せた。
だが驚き振り向いたその人は
背格好こそ似ているものの、
ほんの少し
幼い顔立ちであった。
黒いシックな
パーティードレスを着ていて
頭に大きなコサージュを
飾っているところが、
大人びた印象にさせるのか、
付き合っていた
彼女そのものに思える。
しかしみゆきではない。
「……あの?」
「はっ。
いや、すまない。
人違いだった。
気にしないでくれ」
と言いつつも俺は
目を離せないでいた。
その子は高校生くらいだろうが
みゆきの面影が
随所に見られるんだ。
こんなにも風体が似る
他人がいるものだろうか……。
この子は見ず知らずの
赤の他人なのに
――抱きしめたい。
そんな男の欲望までもを
沸々とこみ上げさせる
気さえした。
とっさに下唇を強く噛んだ。
「君はみゆき……
じゃないよな?」