オバケの駐在所
「でもあそこの木。

あの子だけ成長が
遅くてねぇ。
去年までは
調子よかったん
だけど……。」

頬に手を当て
心配そうに
煩わしさを見せる。
その人間らしさに
ちょっと親しみを
もてそうな気がした。

……悩み相談とか?

「……あの子ね、
お嬢さんの事が
好きらしいの。
だから、……ね。

血をちょうだい。
いいでしょ?」

そう言って
何もなかったはずの
背中の帯から
草を苅るほどの
半月の鎌を抜き取り
訳のわからない
調子いい要求を
笑いながら押し詰めてきた。

……う、嘘でしょ?

返す言葉がありすぎて
口から出てこないくらいの
唐突な流れに
つい鼻息を荒くして、
倒れ込むくらいの勢いで
逃げようとすると
溢れる猫の群れに
足をとられ
やはり派手に転び
猫の血か臓器か
何か冷たい物が
顔にかかるが
非日常的なこの空間に
私の顔は
ひきつりもしなかった。

……何コレ!?
私が何かしたの!?
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