オバケの駐在所
はじめさんはスコップを
バトンのように
回転させて
柄の側を彼女の方に
向けて渡すと
だらしなく帽子を
浅く被り
辺りを見回した。

「迷子になったり
しないよな?

嫌だよ
こんな怖い所で……。」

確かに並木道以外は
怪鳥に食べられても
不思議ではないくらいの
全く訳のわからない
森の中。
こんな所で帰る道が
わからなくなるのは
真っ平ごめんだ。
私は自ずと
おまわりさんの制服を
掴んでいた。

その様子を見て
吉野さんはにこりと
微笑むと
おばあさんの元へと
駆け寄っていった。

「じゃあ行くか。」

ハジメさんの後をついて
歩きながら思う。

私の事を好きって
言っていたらしい桜。
ここに来て
1週間足らずなのに……?
勘違いしてるんじゃ
ないだろうか。

目を閉じる前に
彼女達の方向を振り返ると
すでに猫の姿は無く
彼女達も街灯の灯りに
うっすらと
影を残しているだけだった。

……あのおばあちゃんも
また来るかも。
むしろ私だけ
ここに取り残されたりね。

ちょっとだけ感じた
嫌な予感は
苦笑いと共に不安を
引き連れてきて
私は少しハジメさんに
寄り添うようにして
桜を回りだした。
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