オバケの駐在所
その何かに捕まったと思い
もがいて暴れた私の耳に
それは顔を近づけてきて
優しく気丈に言う。
「落ち着き。
やっと出てきたの。」
その言葉を聞いて
顔を上げると
カラスのクチバシみたいな
烏帽子をかぶった女の人が
立っていた。
大きめの黒の装束に
白の袴を履いていて
嫌に小顔に見えるその人は
私の体から手を放すと
しゃなりしゃなりと
ハジメさんの元へ
歩み寄り
あごを上げて物を言う。
「おい、
日暮町にある
桜小路の桜並木とは
どこじゃ?」
いかにも平安の時代を
闊歩してそうなその女は
長細い木の板で
おまわりさんを指差した。
「びっくりしたなぁ。
急にいるんだもんな。
あんたもしかして
姫かい?」
「……そうじゃ。
質問に答えよ。」
見下す格好で
眉をひそめて聞く女を
不憫に思い
私はつい口をはさむ。
「あの、
……今いるここが
それだけど。」
それを聞くと
周りを見渡し
照れを隠すためか
木の棒を口元に当て
咳払いする彼女。
そして更に高い位置から
棒で指差し
ハジメさんに強く聞く。
「ならば弱っていると言う
咲かずの桜とは
どれじゃ!?
お主が呼んだのじゃろう?
この娘についていた
桜の匂いをつけて
ここまでわざわざ
来たのじゃ!」
もがいて暴れた私の耳に
それは顔を近づけてきて
優しく気丈に言う。
「落ち着き。
やっと出てきたの。」
その言葉を聞いて
顔を上げると
カラスのクチバシみたいな
烏帽子をかぶった女の人が
立っていた。
大きめの黒の装束に
白の袴を履いていて
嫌に小顔に見えるその人は
私の体から手を放すと
しゃなりしゃなりと
ハジメさんの元へ
歩み寄り
あごを上げて物を言う。
「おい、
日暮町にある
桜小路の桜並木とは
どこじゃ?」
いかにも平安の時代を
闊歩してそうなその女は
長細い木の板で
おまわりさんを指差した。
「びっくりしたなぁ。
急にいるんだもんな。
あんたもしかして
姫かい?」
「……そうじゃ。
質問に答えよ。」
見下す格好で
眉をひそめて聞く女を
不憫に思い
私はつい口をはさむ。
「あの、
……今いるここが
それだけど。」
それを聞くと
周りを見渡し
照れを隠すためか
木の棒を口元に当て
咳払いする彼女。
そして更に高い位置から
棒で指差し
ハジメさんに強く聞く。
「ならば弱っていると言う
咲かずの桜とは
どれじゃ!?
お主が呼んだのじゃろう?
この娘についていた
桜の匂いをつけて
ここまでわざわざ
来たのじゃ!」