オバケの駐在所
私は冷たくなった
窓ガラスにそっと息を
吹きかけると
2人に気づかれないように
一筆書きで
小さな傘を書いてみる。
上にハートは
つけないまでも
一目でわかる単純な
相合い傘。

名前は書かない。
私には恋焦がれる人が
いないから。
知り合いもいない。
寄り添う必要も
ないのだから。

口の中に入れてる
甘いストロベリーの飴玉が
せめて私を
慰めてくれている。

窓に映る私の顔は
笑いかけても
どこか無表情に見えた。

「傘が飛んだくらいで
驚くなってんだ!
だいたい最近は
コウモリ傘や
カッパばっかりで
俺の出番が全然ない!

友とすれ違う事も
昔に比べて
少なくなったよ。」

おまわりさんが
奥の部屋から持って来た
ビニールテープで
折れた骨を補強されながら
和傘は愚痴をこぼしていた。
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