夕暮れ色の君


…それに、あたしはどこまで迂闊(うかつ)だったんだろう。



〝もう、誰とも関わらないで生きていく〟


これは他でもない、あたし自身が決めたことなのに、自ら禁忌を破ろうとするなんて。



いくら“あの人”と似ていても、いくら“あの人”の面影があったとしても、蒼さんは絶対に“あの人”な訳じゃなくて。



“あの人”はあたしにとって、たった一人の大切な人だってことは、変わることのない事実で。

もちろん、他の人が代わりになる訳はなくて。



それを知っていたはずなのに、あたしは“あの人”に似てるから、という単純な理由で自分から近づいてしまった。



…勝手に突っ走って、勝手に悔やんでるなんて、本当、馬鹿みたいだ。


< 11 / 85 >

この作品をシェア

pagetop