夕暮れ色の君
『…どうかした?』
急に顔を曇らせたあたしの顔を見て、心配そうに蒼さんが尋ねる。
あたしは、動揺が気づかれないように咄嗟に答える。
「っ、いえ、何でもないです」
『そう?顔色が悪い気がするんだけどな』
「大丈夫です。あたし、もう遅いんで帰ります、では、」
時刻は5時40分。
小学生なら、帰らなければならない時間かもしれないけど、高校生のあたしには全く遅くない時間。
それなのに、あたしがそんなことを言ったのは、ここにいるのが苦痛になってしまったから。
…もう、これ以上関われないって思ったから。
一礼だけして、くるっと蒼さんに背を向ける。
そうして、来た道を引き返そうと、歩き出したその時…、