夕暮れ色の君


―――グイッ…、



突然、蒼さんがあたしの腕を引っ張った。



といっても、強く引っ張るのではなく、ふわりと持ち上げるように優しく。



それでも、早く帰りたいあたしは怪訝(けげん)な顔を見せてしまう。



「…、何ですか」



全く愛想の欠片もないあたしの応答。



そんなあたしに、嫌な顔ひとつせず笑いかける蒼さん。



…ひどく、対称的だ。



『さっき、僕の名前聞いたでしょ?』


「…はい」



…それが何だというんだ。


あたしはまだ怪訝な顔を崩さず、蒼さんの言葉を待つ。



『だから、君の名前も教えてよ?』



なるほど。


自分も教えたんだから、あんたも教えろよ、ってことを言いたいのか。


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