夕暮れ色の君


確かに、聞いたら自分も言う、それが常識だと思う。


でも、あたしには通用しない。


あたしは、もう誰とも関わらないって決めてるから。


「…失礼します」



蒼さんの言葉には、全く反応せず、また同じように背を向ける。



しかし、蒼さんがあたしの腕を握っているために、歩き出すことができない。



「手、…離して、ください」


『…』



応答は、ない。


無視したあたしへの仕返しなんだろうか。



「蒼さ…、」


『君、ここにはよく来るの?』



「蒼さん」と言おうとした言葉が、遮られる。



それに、ここにはよく来る、なんて。



当たり前だ。

毎日のように通いつめているんだから。


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