夕暮れ色の君
だけど、そんなこと言えない。
言える訳が、ない。
言ってしまったら、嫌でも何度も関わることになる。
ましてや、“あの人”に似ている蒼さんには、絶対に言えない。
これ以上、関わってしまったら、“あの人”のことも気づかれてしまうかもしれない。
それだけは、絶対にできない。
最大の、タブーだ。
『…言えないの?』
頑なに、唇を閉ざすあたしを見かねてか、蒼さんが問いかける。
あたしは、小さく首を縦に振った。
俯くあたしの前で、蒼さんがあたしの腕を持ってない方の手で、髪をぐしゃぐしゃにしているのがわかった。
優しそうな蒼さんも、あたしの横暴ぶりには参ってしまっているのだろう。