夕暮れ色の君


だけど、そんなこと言えない。

言える訳が、ない。



言ってしまったら、嫌でも何度も関わることになる。


ましてや、“あの人”に似ている蒼さんには、絶対に言えない。



これ以上、関わってしまったら、“あの人”のことも気づかれてしまうかもしれない。



それだけは、絶対にできない。

最大の、タブーだ。



『…言えないの?』



頑なに、唇を閉ざすあたしを見かねてか、蒼さんが問いかける。



あたしは、小さく首を縦に振った。



俯くあたしの前で、蒼さんがあたしの腕を持ってない方の手で、髪をぐしゃぐしゃにしているのがわかった。



優しそうな蒼さんも、あたしの横暴ぶりには参ってしまっているのだろう。


< 15 / 85 >

この作品をシェア

pagetop