夕暮れ色の君
譲らないあたしと、蒼さんの間には、長い沈黙。
はぁ、と小さくついた蒼さんの溜め息が合図となり、蒼さんが先に声を発した。
『…君は、どうして、そんなに秘密が多いんだろうね』
言ったかどうか、分からないくらいの小さくて、か細い、声。
先程までの、優しくて暖かい声じゃなくて、少し弱々しく感じる。
『名前も、日常も、』
「っ」
『誰にも言えないこと、なの?』
蒼さんが、あたしを見つめて言う。
…早く、早く帰らなきゃ。
直感的に頭が危険を察知する。
蒼さんが、悪いんじゃない。
あたし、が悪いんだ。
“あの人”に似ているっていうだけの、罪のない蒼さんを受け入れられない。