夕暮れ色の君
…だけど。
“あの人”と同じ、優しげな瞳を見てしまったら。
“あの人”と同じ、綺麗な顔を見てしまったら。
どうしても“あの人”を重ねられずにはいられないから。
もう、これ以上近づけない。
これが、限界だ。
あたしは、今まで握られていた蒼さんの手を力強く、振り払った。
『え、』
あたしの突然の行動に、蒼さんも動揺しているのが見える。
でも、そんなこと気にしてられない。
「あたし、帰りますから。さよなら」
全く感情のない言葉を残して帰ろうとすると、またもや腕を掴まれる。
…その、瞬間。
ついに、重なってしまった。
――あの日の前日の、“あの人”に。