夕暮れ色の君
あたしの手元にあるのは、「彼女へのラブレター」という作品。
主人公は、病院に入院する重病を患う少年。
ある日、少年は病院に訪れていた綺麗な少女に一目惚れする。
体が弱く、日中、外に出られない少年は、彼女に逢うことさえできず、
ただ、名前も知らない彼女への想いを手紙に書き綴るだけ。
〝もし、僕の命の灯が消えそうになったなら、この手紙を彼女に渡そう〟
〝その手紙が、僕がこの世に存在していたたった一つの証になるように〟
そう、決意していた少年だったが、その決意も虚しく、急な発作によって、呆気なく一生を終えてしまう。
二番目の引き出しに入れておいた、彼女への手紙を渡すことさえできずに。