夕暮れ色の君
もう一度、小説をじっと眺める。
あたしを大切にしてくれていた、“あの人”のことだから、
この作品と同じように、あたしの幸せを願ってくれていたんだろう。
あたしの今の生活は、“あの人”の願っているような、
幸せがある生活じゃないって、分かってる。
…分かってる、けど。
あたしは、“あの人”がいる世界だけが、幸せだった、から。
“あの人”がいない世界となった今では、幸せになれる理由なんか、なくて。
あたしは、ただ“あの人”が隣にいてくれて、笑ってくれるだけで、
これ以上ないくらい、幸せだったのに。
何で、あたしを置いてきぼりにして、居なくなってしまったの。