夕暮れ色の君
「っ…会いたいよ、」
たまらなく、“あの人”に会いたい。
澄みきった、綺麗な声が聞きたい。
意地悪に笑う、無邪気な笑顔が見たい。
あたしの頭をくしゃ、っと撫でる、優しい手が恋しい。
もうあの人が居なくなって一年が経とうとする今も、
あたしは、こんなに“あの人”を求めてる。
それでも。
“あの人”の全てがあたしにとって大事で、どんなに愛しいものであっても、
もう、“あの人”の元へ、あたしの手が届くことは二度とない。
「っ」
そんな風に溢れ出しそうな気持ちを、押し込めるかのように、
あたしは本を胸に抱いて、そっと意識を手放した。
…夢だけでも、“あの人”を感じていたい、から。