夕暮れ色の君
『…どうして、そんな風に考えるの?』
今まで、淡々と話すあたしの話を黙って聞いていた蒼さんが、小さく尋ねた。
「え、」
『だって、ハッピーエンドにならない小説なんて、探せばいくらでもあるよ。
それなのに、そんなにハッピーエンドにこだわるってことは、』
そこまで言って、蒼さんはあたしを見据える。
『何か、そうしないといけない、深い理由があるんじゃないの?』
蒼さんのその言葉に、どき、と大きく心臓が跳ねた。
…何で、蒼さんはあたしのことを簡単に見抜いてしまうんだろう。
何で、あたしはこんなに見抜かれてばかりなんだろう。
距離をとって話をしているのに、蒼さんには全く意味のないこと、みたいだ。
…だって、二人の距離はこんなにも、近い。