夕暮れ色の君
「だから、あたし…、」
『…もう、いいよ』
ふと、聞こえた蒼さんの声。
「…え、」
『もう、いいから。ごめんね』
蒼さんが悲しそうな顔をして、言う。
何で、蒼さんが、そんな顔をするの。
蒼さんは、何も知らないはずなのに。
「何で、謝るんですか…、」
あたしが勝手に話しているのだから、蒼さんは謝る必要なんかないのに。
どうして、とあたしが蒼さんを見ても、蒼さんの表情は何も変わらない。
それどころか、蒼さんがあたしの方を見た瞬間、更に表情は切なくなった。
『…だって、君、泣きそうな顔してる』
蒼さんにそう言われて、初めてあたしの瞳に涙がたまっているのが、分かった。
あんなに、人前で泣くことを恐れていたのに。