夕暮れ色の君
『走っても走っても、闇の中から解放されない。
僕には光を見ることができる権利がないんだ』
蒼さんから淡々と話されるように聞こえる言葉。
…だけど、その、一瞬。
笑顔だった表情が、ひどく寂しそうに見えた瞬間、
心臓を掴まれたような、苦しい気持ちが身体中を駆け巡る。
だけど、今まで人と関わらず過ごしてきたあたしは、
何か声をかけてあげたいと思っても、言葉が出てこない。
あたしが何もできずに、ただ立ちすくんでいると、
『なーんてね』
急に明るい声が、聞こえた。
あたしがもう一度顔をあげると、蒼さんはいつも通りの柔らかい笑顔。
さっき目にした表情が、嘘のようだった。