夕暮れ色の君
とりあえず、〝今から帰るよ。心配しないで〟とだけ打って、携帯を閉じる。
視線を感じ、見上げればまたこちらに微笑む蒼さん。
『あ、連絡、できた?』
「はい。すみません、長くお待たせしちゃって…」
『はは、大丈夫だよそんなの。じゃあ、帰ろっか。
歩きながら、自己紹介しようね』
そう言って歩き出した蒼さんの横に並んで、あたしも歩く。
…なんだか、慣れない。
『自己紹介するけど、まぁ、僕の名前は分かるよね?』
「山内蒼、さん…ですよね。」
『うん、正解。
…じゃあ、僕が最初の意味なかったなー。今度は君の番ね』
どうぞ、と微笑まれ、自分の手をぎゅ、っと握りしめる。
心を落ち着けて、すう、っと思いっきり息を吸って…―――
「…古賀、栞です」
小さく、でもはっきりと名前を告げた。