夕暮れ色の君
…午後5時。
やっと学校から下校できる夕暮れ、あたしは必ず寄る場所がある。
住宅街や商店街から離れた森に近い静かなそこは、あたしと“あの人”しか知らない、二人だけの秘密の場所。
普段の息苦しい生活から、あたしを解放させてくれる大切な場所。
新鮮な空気。
木葉の揺れる音。
小鳥のさえずり。
木の隙間から差し込む、あたたかな光。
いつも無愛想なあたしだけど、この場所に来たときだけは、自然と笑みが零れる。
カバンから読んでいる愛読書を取りだし、いつもの木の下の木陰で、本の続きを読むつもりで向かう。
…しかし、その足は途中で止まる。
なぜなら、誰もいないはずのそこに、夕焼けに照らされた見たことのない青年がいたからだ。