夕暮れ色の君
『んー、ちょっと熱い気がする。熱があるかも』
…それは、紛れもなく蒼さんが近すぎるせいです。
とは、この至近距離では言えず。
あたしは、心の中で悲鳴をあげる。
『…本当に、大丈夫?』
心配そうにあたしを見る蒼さんを見る限り、蒼さんはこれを天然でやっている。
…これを天然とか、相当恐ろしいけれど。
「だ、大丈夫です…。熱とかないんで…」
『そう?なら、いいんだけど…』
蒼さんから離れたあたしは、ただ赤くなる頬を冷やすことに専念する。
そうしているうちに、駅に辿り着いた。
近いはずのその5分があたしにとっては、物凄く長く感じたけれど。