夕暮れ色の君
その笑顔の裏には
「帰らなきゃ…」
すっかり力が抜けた体だったけど、何とかバスに乗りこんで、家に辿り着いた。
ベッドに倒れた体を持ち上げて、携帯を握る。
「…、」
電話しなきゃ、だったよね。
少し気が重たかったけど覚悟を決めたあたしは、
電話帳から新しく追加された〝山内蒼〟の文字に当てて、電話をかける。
『…もしもし?』
ワンコールで、声が聴こえた。
蒼さんの、優しく響くテノール。
「もしもし。あ、あたしです」
『うん、しーちゃんね』
声だけで、あたしって分かるとは凄い。
「はい。あの蒼さん、やっと…」
『あーおーいー』
蒼さんが、あたしの言葉を遮る。
全く、意味が分からない。