夕暮れ色の君
これで、聞こえてないと言われたら、あたしにはもう一度言う勇気はなかったけれど。
そのあたしの気持ちを知ってか、蒼さん…じゃなくて、蒼の。
『ん、合格』
…優しい声が、聞こえた。
その声に安心して、はーっと息を吐く。
そんなあたしの声を聞いて、笑った蒼はまた言葉を続ける。
『…ね、電話したってことは、家に着いたんでしょ?』
「は、はい」
『あ。こら、敬語禁止』
「っ!…うん、そう」
…本当は、呼び捨てもタメ口も普段使わなくて慣れないことだから、すごく緊張している。
平然を装ってはみるけれど、蒼にはそんなのはやっぱり、お見通しだったらしい。