夕暮れ色の君
「…!」
一瞬、息が止まるかと思った。
だって、この場所を知っている人はいないはず。
それなのに、何故、夕暮れ色に染まっている青年はこの場所を知っている?
押し寄せる恐怖と不安に、思わず後ろに後退りするあたしに合わせて、地面の落ち葉がカサっと音を立てる。
すると、頭をうずめて眠っていた彼がその音に気づいたらしく、ゆっくりと顔を上げた。
あたしは、棒立ちになったまま、彼を見つめる。
そして、あたしと彼の視線が交わった時、あたしは本気で呼吸をすることを忘れた。
…その夕暮れ色の青年は、大好きだった“あの人”に驚くほど、そっくりだったから。