夕暮れ色の君
“あの人”に似てる
「っ」
…これは、何が起きているんだろうか。
もしかしたら、あたしが今見ている彼は幻で、あたしはただ夢を見ているのかもしれない。
でも、瞬きを何度しても状況が変わらないのは、それが現実だっていう確かな証明なのであって。
だけど、あたしはこの状況を簡単に飲み込めるほど、気丈な性格な訳でもなくて。
「あなたは、誰…」
気がついたら、そう尋ねていた。
後から考えたら、全く意味が通じないものだったと思う。
でも、その時のあたしには先を見越して話す、ということができそうになかった。
信じられない出来事が一気に起きすぎて、考えることが多すぎて、平常心を保つことに必死だったから。