夕暮れ色の君
「…、嘘でしょ?」
…自分の目を、疑った。
きっと、あたしが見てるのは夢か幻なんだって。
今まで柔らかい笑顔を見せてくれた蒼が、こんな風に倒れてしまう訳がないんだって。
それなのに、そう思ってるはずなのに、両足が動かない。
事実を知りたくないと、体が拒んでる。
「っ、嫌」
〝まだ若い男の子だったのにねぇ〟
〝音楽の得意な優秀な子だったんでしょう?〟
〝でも元々身寄りがない子よね、病弱なお母さんしかいないんですってね〟
…思い出したくない記憶が。
ずっと頭の中に封印してきた記憶が、また蘇る。
蒼に瓜二つな“あの人”が影を現した時だった。